「痴漢冤罪」新堂冬樹著
あるサラリーマンが電車の中で、少女から痴漢だと訴えられるところから物語は始まる。身の潔白を主張するつもりで駅の事務所に行こうとしたところ、居合わせた弁護士に示談に持ち込んだ方が被害が少ないと諭され、示談金を支払うことに。
しかし、これは弁護士の木塚が、被害者役の女性と目撃者役の男と組んで仕掛けた巧妙なワナだった。
結婚指輪をしている、いい靴を履いている、高い腕時計をしているの3条件をチェックしてカモを見極めてから、カモのそばに女を配置して女から体を押し付け、被害を装うのだ。
トントン拍子に金を手に入れた木塚の次のターゲットは、人気の若手俳優・松岡。所属事務所の社長・吉原から金を巻き上げる魂胆だったのだが、吉原との交渉は想像以上に壮絶なバトルと化していく……。
「血塗られた神話」でデビューして以来、裏社会を描写した小説で定評のある著者の最新作。痴漢冤罪をテーマに、やるかやられるかの男の勝負を描いている。
(祥伝社 1850円+税)