タックスヘイブンの新たなリーク文書が解禁

公開日: 更新日:

 昨年11月、タックスへイブン(租税回避地)であるバミューダ諸島などに設立された法人や組合に関する流出文書が世界一斉に解禁された。文書数はおよそ1340万件に上り、2016年に“史上最大のリーク”と呼ばれたパナマ文書よりデータ量は少ないものの、文書の内容はこれまでのものとは比較にならないほど詳細で具体的であるという。

 この新たな文書の内容と、報道に至る経緯が詳述されているのが、奥山俊宏著「パラダイス文書」(朝日新聞出版 1300円+税)。世界各国のジャーナリストと手を組み、タックスヘイブンの調査報道に取り組んできた朝日新聞編集委員である著者の執念が伝わってくる。

 富裕層が行ってきた税逃れの実態を露見させたパラダイス文書。そこには、世界47カ国127人の君主や政治家の名前が掲載されていた。例えば、イギリスのエリザベス女王やトランプ政権閣僚のロス商務長官。芸能人ではアメリカの歌姫マドンナや、アイルランドのロックバンド「U2」のボーカルであるボノの名前もあった。日本人でも、「ドラゴンボール」の作者である鳥山明、そして鳩山由紀夫元首相の名前も掲載されていたという。

 ちなみに、“パラダイス”の由来はイタリア語やフランス語でタックスヘイブンを“税の楽園(パラダイス)”と表現するところからきている。名付けたのは、著者もメンバーである国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)だ。弁護士と会計士の力を借りて法務と税務の最新知識を駆使し、巧妙かつ適法に租税を回避することは当然の行動かも知れない。しかし、それが可能なのは大企業や超富裕層のみ。そして、そのシワ寄せは必ず中流階級に向かうと本書。

 パナマ文書やパラダイス文書に対する日本人の関心は、海外ほど大きくはないかも知れない。その背景には、日本と欧米の報道姿勢の違いにあると著者は言う。名誉毀損や実名報道の判断基準、訴訟記録へのアクセスに至るまで、日本は欧米よりも基準が厳しい。つまり、報道に規制が多すぎることで、国民に真実が伝わりにくくなっているのだ。

 本書では、ICIJによる調査報道の現場についても詳細につづられている。“パラダイス”に集う超富裕層たちの代償を払わされる我々は、真実を知らなければならない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大阪万博批判は出尽くした感があるが…即刻中止すべき決定版が出た

    大阪万博批判は出尽くした感があるが…即刻中止すべき決定版が出た

  2. 2
    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

  3. 3
    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

  4. 4
    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 7
    浜辺美波は順風満帆、趣里は「ブギウギ」のインパクトが…NHK朝ドラヒロイン“その後の明暗”

    浜辺美波は順風満帆、趣里は「ブギウギ」のインパクトが…NHK朝ドラヒロイン“その後の明暗”

  3. 8
    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

  4. 9
    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚

    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚会員限定記事

  5. 10
    山下智久「ブルーモーメント」急失速は出口夏希の中国語が原因? 興奮すると飛び出す“ナゾ設定”

    山下智久「ブルーモーメント」急失速は出口夏希の中国語が原因? 興奮すると飛び出す“ナゾ設定”