風邪薬を飲めば飲むほど症状が長引く!?

公開日: 更新日:

 風邪をひいたぐらいでは休めない忙しいサラリーマンは、風邪薬を飲んでやり過ごすという場合がほとんどだろう。しかし、その風邪薬は無駄なばかりか危険な毒薬だと警告するのが、松本光正著「かぜ薬は飲むな」(KADOKAWA 800円+税)。74歳の現役ベテラン医師が、風邪薬の正体や日本の医療の誤りを一刀両断している。

 風邪を引き起こすのは、細菌ではなくライノウイルスなどのウイルスである。しかし、ウイルスが原因と分かっていても、治療方法はない。単細胞生物である細菌と違い、ウイルスはDNA・RNAという遺伝子だけを持つ単純構造の微生物。そのため、細胞を攻撃する抗生物質が効く細菌感染とは異なり、ウイルス感染には有効な薬がないのだ。

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して起こるエイズばかりが薬がないわけでない。ポピュラーなウイルス感染症である麻疹にもノロウイルスにも、ウイルス自体を叩く薬はない。そして、風邪も同様なのだと本書。

 それでは、風邪薬は何のために飲むのか。成分を見てみると、解熱鎮痛剤や咳止め、鼻水止めなどが含まれていることが分かるが、これらはすべて症状を和らげることを目的とした化学薬品である。薬で症状が軽くなると風邪自体も良くなったように感じてしまうが、実はまったくの逆効果。熱も咳も鼻水も、体内の免疫力が働いてウイルスを攻撃している証拠であるためだ。

 高齢者は高熱が出にくく、気づかぬうちに肺炎を悪化させるケースがあるが、これは免疫力の働きが弱いために起こる現象。つまり、風邪の症状がひどい人はそれだけ免疫力が激闘しており、ウイルスをやっつけて回復を早めていることになる。そんなときに風邪薬を飲むことは、免疫力の邪魔をして風邪を長引かせる行為という。

 風邪薬は無駄なばかりでなく、恐ろしい副作用もある。あっという間に死に至るアナフィラキシーショックをはじめ、全身の皮膚や粘膜に紅斑や水疱が現れるスティーブンス・ジョンソン症候群、急性脳炎を伴うライ症候群などいくつもある。本書では、無駄なワクチン接種や世界の8割のタミフルが日本人に使われているというインフルエンザ治療の異常にも言及。薬を妄信してはいけない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  2. 2

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  3. 3

    東野幸治とハライチが春の番組改編で大ピンチ…松本人志、中居正広のスキャンダルでトバッチリ

  4. 4

    元兵庫県議の死をめぐり虚偽情報拡散…立花孝志氏は名誉毀損で立件なるか?若狭勝弁護士が見解

  5. 5

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係

  1. 6

    綱とり出直しの琴桜に必要な「脱・頭でっかち」…初場所の足を引っ張ったのは考えすぎる悪い癖

  2. 7

    TBS「報道特集」が検証…立花孝志氏が流したデマと恫喝の実態

  3. 8

    文春訂正で中居正広ファン分裂! 「本人は無罪」vs「悪質性が強まった」で大激論

  4. 9

    中居正広トラブルへの関与を改めて否定も…フジテレビ“当該社員”に「緊急異動」発令で社員ザワめく

  5. 10

    フジテレビ顧問弁護士・菊間千乃氏に何が?「羽鳥慎一モーニングショー」急きょ出演取りやめの波紋