日本を従属させる「第2の国体」の終焉へ
「国体論 菊と星条旗」白井聡著/集英社940円+税
「永続敗戦論」で注目を集めた著者による新著である。どのような敗北を喫したのか自覚しえない結果、敗北状態からの脱出が不可能化された永続敗戦体制が、本書では戦後日本の第2の「国体」として論じられている。
第1の「国体」とはむろん、戦前の天皇主権国家を意味する。そこでは、万世一系の天皇を頂点に戴いた「君臣相睦み合う家族国家」の理念が国民に強制され、逸脱者は暴力的に排除された。戦後日本国家の形成過程を追いながら、著者は「国体」護持と対米従属がワンセットになった戦後日本の権力システムについて検討していく。そこから明らかになるのは、国民主権と象徴天皇制の戦後日本にも「国体」は温存されてきた事実だ。
アメリカの占領行政は、天皇の権威を利用することで効率的に実施された。占領の終結と日本の「独立」を定めたサンフランシスコ条約は、日米安保条約と抱き合わせで成立している。象徴天皇制を明記した日本国憲法の上に日米安保条約が、ようするにアメリカが君臨していることは、この事態によっても明白だろう。
第2の「国体」は、かつて天皇が占めていた場所にアメリカが入りこむかたちで形成された。第2の「国体」のもとで戦後日本人は、「両国睦み合う親密関係」として日米関係を捉え、アメリカは日本への「愛」や「好意」から、軍事的にも経済的にも日本を保護してくれていると思いこんできた。もちろんアメリカは、自国の利益のために日本を支配し、従属させてきたにすぎない。
戦前の「国体」が迷走の果てに破滅したように、著者によれば、戦後のそれにも終焉の時は迫っている。「アメリカ・ファースト」路線のトランプ政権が、経済的にも軍事的にも、日本をアメリカのための消耗品として扱うのは必然だ。戦前と同じように、第2の「国体」もまた日本国民を無残に使い潰して崩壊することだろう。