「愛着アプローチ」岡田尊司著
多くの病は薬による医学的アプローチで治療が施されてきた。しかし近年、うつやひきこもり、依存症にDVなど、対処が難しい病が増えている。そこで精神科医である著者が取り組むのが、“愛着”の安定を促すことで症状の改善を目指す「愛着アプローチ」という手法だ。
愛着は一般的に人や物に対する思い入れと理解されているが、心理学の世界では人との情緒的な結びつきのことを指す。そして、親との愛着が十分に形成されるか否かは、社会性やストレス耐性、知的な発達までも左右し、その後の人生に大きな影響を及ぼすと考えられているという。
愛着のタイプには安定型と不安定型があり、不安定型の中でも回避型や両価型などいくつかのタイプに分けられる。安定型の人は他者に支配されることはなく、必要に応じては他者に頼ることもできる。しかし回避型の人は親密な関係を恐れて他者に頼ることができず、また頼られることにも苦痛を感じる。両価型の人は愛情を求めて過剰に他者に合わせるが、その期待が裏切られると怒りを爆発させるという両極端な特徴を持つ。
本書では、不安定型を脱して安定型愛着になるためのプログラムも紹介。自分が嫌な気持ちになる場面を書き出し、それを題材に作家になって物語を作るなど、第三者の視点を持つ訓練を行うことで認知と行動と感情のバランスを整えていくものだ。
愛着へのアプローチが、従来の医学でも救えなかった苦しみを救うかもしれない。
(KADOKAWA 1700円+税)