典型的な症状が表れにくい高齢者特有の疾患
「70歳からの病気」朝日新聞出版編
“人生100年時代”となっている長寿国・日本。高齢になればどうしてもリスクが高くなり、回避も難しい疾患があることも知っておかなければならない。本書では老化によってかかりやすくなる28の疾患について、その症状や治療法などを解説している。
若い頃から食生活に気をつけていた人でも、高齢になって糖尿病を発症するケースがある。血糖値を下げるインスリンは、加齢とともに働きや分泌量が低下するためだ。「高齢者糖尿病」と呼ばれる疾患では、若い世代の糖尿病のように口渇や多飲などの症状が表れず脱水症状が起こりやすい。
さらに、治療薬で重度低血糖が起こりやすいのも特徴のひとつ。しかも、激しい動悸や発汗、ふるえなどの典型的な症状は表れず、一方で体のふらつきや目のかすみ、あるいはせん妄などが起こる。低血糖に気づかず対処が遅れ、救急搬送される高齢者が年間2万人近くいるそうだ。
年を取ってから突然表れる「高齢発症てんかん」にも要注意だ。てんかんは大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こる脳の慢性疾患で、高齢者では脳血管障害や認知症によっても起こるが、原因不明の場合も少なくない。症状は口をもぐもぐ動かす、ボーッと一点を見つめるなどてんかんに見えないものも多い。しかし、突然意識を失うこともあり、車の運転中なら大事故にもつながる。抗てんかん薬で症状を抑えることは可能であるため、早めの受診が大切だ。
(朝日新聞出版 1300円+税)