悪玉コレステロールが高い人ほど長生きする!?
「それでも「コレステロール薬」を飲みますか?」宇多川久美子著
多くの人が“健康の敵”と認識するコレステロール。しかし今、その常識は覆されつつある。本書では、コレステロールの最新常識について、薬剤師であり栄養学博士でもある著者が徹底解説している。
2017年8月、世界的権威がある医学雑誌「ランセット」のオンライン版に、次のような論文が掲載された。「脂肪の摂取量が多いほど死亡リスクは低下する」。この論文で指す脂肪にはコレステロールも含まれている。茨城県立健康プラザが10年間かけて延べ9万人に行った調査でも、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールの値が高い人ほど、総死亡率が下がるという結果が出ているという。
多くの人が知るコレステロールの常識に、「卵は1日1個まで」がある。しかしこれは大きな間違い。卵がコレステロールの塊のように言われるようになったのは1913年にロシアで行われた実験が基であり、草食動物であるウサギに大量の卵を食べさせたところ動脈硬化を起こした、という結果によるもの。現在では、人間は1日10個の卵を食べてもコレステロール値は変化しないことが分かっている。
それどころか、体内のコレステロール値は食事による影響をほとんど受けないばかりか、少なければ健康を害するため体内で合成されることも分かってきたという。
本書では、コレステロールを下げる薬による免疫力低下や糖尿病などの副作用も紹介。常識を疑い、もう一度コレステロールについて学ぶ必要がありそうだ。(河出書房新社 1200円+税)