政府の無策を露呈させるJアラートの呆れた内容
“北朝鮮の脅威”を理由に、安倍政権が実施してきたJアラートの発動とミサイル発射を想定した住民参加の避難訓練。先月、米朝首脳会談による朝鮮半島の緊張緩和を受けた政府は、ようやく避難訓練の当面見合わせを決めた。
しかしそもそも、Jアラートもミサイル訓練も“その後”の対処法については中身が整備されておらず、建前だけの「国民保護」の現状を露呈させるものと一刀両断しているのが、上岡直見著「Jアラートとは何か」(緑風出版 2500円+税)である。
内閣官房による「国民保護ポータルサイト」では、弾道ミサイル落下時の行動に関する解説がなされている。しかし、その内容は矛盾した無責任なものばかりだ。例えば、「窓から離れる、あるいは窓のない部屋に移動」「窓を閉め、目張りをして密閉」という記述があるが、このような行動を取ると肝心の防災行政無線が聞こえなくなる。福島原発事故ではこの行動が原因で避難が遅れた住民もいるほどだ。
「屋外にいる場合は風上に避難する」との記述もあるが、爆風や火災による旋風が発生する中、風向きなど分かりようがない。「地下へ避難」についても、サリンやVXガスは低いところにたまりやすく、むしろ危険にさらされることになる。
ここまでいい加減な内容であるにもかかわらず、不快な警報音と避難訓練で国民の危機感をあおってきたのはなぜなのか。麻生副総理・財務相は2017年10月26日の講演で、衆議院議員選挙での自民党安定多数の確保は「明らかに北朝鮮のおかげもある」と発言している。政府にとってJアラートは、北朝鮮と同様に“利用価値”があるシステム。国民の安全など二の次なのだ。