「日米地位協定と基地公害」ジョン・ミッチェル著、阿部小涼訳
米軍人に治外法権的な特権を保障する日米地位協定。米軍人が事件を起こすたびに話題になるが、この協定は米軍基地によるやりたい放題の環境破壊も闇に葬っている。
ジョン・ミッチェル著「日米地位協定と基地公害」(阿部小涼訳 岩波書店 1900円)では、日本で米軍が行ってきた汚染物質垂れ流しの実態を暴露。見て見ぬふりをしながら自国民の健康を危機にさらし続ける無策な日本政府の罪も糾弾している。
戦闘機や武器弾薬であふれた米軍基地からは、ダイオキシンやヒ素、放射性廃棄物などありとあらゆる有害物質が発生し、戦後70年以上にわたり日本の土や水を汚染してきた。中でも沖縄は最大の被害地で、最近では那覇市を含む100万規模の人口を支える飲料水源がパーフルオロ化合物で汚染されていることが発覚した。これは軍用の泡消火剤に含まれる物質で、発がん性が指摘されている有害物質だ。
2013年には、子どもたちが遊ぶ沖縄市サッカー場の地中から108本のドラム缶が発掘され、中には軍用枯れ葉剤の主要成分が含まれるものも見つかった。
しかし、現在の地位協定では米軍の責任を追及することができない。3年かけて行われた沖縄市サッカー場の浄化作業には9億7900万円かかったが、米政府はビタ一文出さず、全額を日本の納税者が支払っている。
米軍による軍事公害は世界中で問題となっており、ドイツや韓国など各国で米国政府による汚染調査の実施や浄化費用の負担を勝ち取っている。しかし日本では、実効性のない調査の“要請”を行うのみだというから情けない。健康に生きるという我々の権利を侵害する米国と日本政府。いずれも同罪だ。