「すごい葬式」小向敦子著
死ぬ前にボケをかまそう――と、「老年学」「笑い学」の気鋭学者が、死に臨んでの笑いを考察した書だ。
江戸時代の芝居作家・4代目鶴屋南北は自分の葬儀に、喜劇仕立てにした芝居の台本を用意した。1989年、イギリスのコメディアン、グレアム・チャップマンの追悼式典では、仲間が「本人から放送自粛用語『F※※k』を口にしてくれと頼まれた」と、その言葉を発し、笑いに包まれた。2011年に没した立川談志は「雲黒斎家元勝手居士(うんこくさいいえもとかってこじ)」という戒名を生前、自分で付けていた。そうした古今東西の面白い事例と、老化現象を自虐ネタにする、楽しい生前葬を開くなど、凡人も真似られそうなヒントが満載。シニア期に達したら、死をユーモアで飾る助走態勢に入っていこうと誘われる。
(朝日新聞出版 760円+税)