「本の夢 本のちから」椎名誠著
フレデリック・フォーサイスの「悪魔の選択」の冒頭に、アメリカの大統領が自国の監視衛星の映像を見ているシーンが出てくる。それはロシアのウラル地方の小麦畑で、農夫が立ち小便している映像だった。人工衛星がそんなものまで見分けてしまうことに落胆した著者は、ヘディンの「さまよえる湖」を思い出した。湖がさまようことにロマンを感じたのに、それは宇宙衛星時代には意味をなさなくなった。その本に登場する2000年前の失われた砂漠の都市の風景も、NHK「シルクロード」シリーズで見た現実の風景に影響されてしまった。(「辺境地帯の現場読み」)
探検好きの椎名誠の世界を広げてくれた本の魅力を称えるエッセー。
(新日本出版社 1800円+税)