「曽呂利 秀吉を手玉に取った男」谷津矢車著
秀吉は、天下統一を目前にして、四国の長宗我部を兵糧攻めにすべく、米を買い集める。そんな秀吉をやゆする狂歌が堺の町に広がる。激怒した秀吉の前に引き立てられた狂歌の作者は、刀がそろりと音もなく収まる鞘を作ることから曽呂利と呼ばれる元鞘師だった。
秀吉の眼前でも物おじしない曽呂利は、秀吉が気に入る鞘を作ることを条件に命拾いする。しかし、曽呂利が秀吉のために作った鞘は、武骨で、抜刀の音を響かせた。わざとそう作ったという曽呂利は、狂歌もやゆするものではなく、秀吉の覇業を応援する歌だと話す。曽呂利の頓知を気に入った秀吉は、彼を臣下に加えることに。
口八丁手八丁で秀吉に取り入る曽呂利が大坂城を混乱に陥れる時代長編。
(実業之日本社 694円+税)