「元禄五芒星」野口武彦著

公開日: 更新日:

 講談・落語の演目に「徂徠豆腐」というのがある。儒学者の荻生徂徠が食うに困っていた時代、豆腐売りの七兵衛が毎日おからを届けてくれ、その後出世した徂徠が火事で焼け出された七兵衛に救いの手を差し伸べたという話だ。本書の「徂徠豆腐考」は、徂徠の学問が「一時にガラリとらちが明いた」決定的瞬間は七兵衛と徂徠との、とんちんかん問答にあったのではという仮説を述べたもの。

 徂徠が一躍有名になったのは赤穂浪士の処分について理路整然とした論を老中の柳沢吉保に述べたことによる。赤穂浪士47人の中で最年少は大石内蔵助の長男・主税だ。討ち入りの際には裏門攻め入りの隊長を務め、若き偉丈夫というイメージが強い。

 しかし忠臣蔵を題材にした当時の読み物の中には、主税=陰間(男娼)のイメージが強くつきまとっていたという。なかには堀部安兵衛と意を通じていたというものも。そんな大石主税の隠れた裏のイメージを引き出したのが「チカラ伝説」である。

 その他、討ち入り費用に関する貨幣理論を説いた「算法忠臣蔵」など、忠臣蔵を軸に元禄時代の世相、思想を虚実を交えて描いた5編を収録。

(講談社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」