「ナチズムは再来するのか?」A.ヴィルシングほか編 板橋拓己ほか監訳
英EU離脱問題で揺れる欧州。フランスの未来は暗雲だが、頼みのドイツも極右派勢力が急伸中。「再ナチ化」なんてあり得ないと一笑に付すことができなくなりそうだ。本書はこの問題をふまえ、代表的な歴史学者・政治学者7人がフランクフルトの新聞に寄稿した論集。
核心のひとつが現代ドイツとワイマール共和国は似ているのかという点。ナチスと現代の右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)を安易に類比するのは左翼の思い込みという。細かな点では違うところのほうが多い。一番の共通点は両者のメンタリティーの相似、つまり不安や不満につけ込み、旧政党への感情的な敵意をむき出しにする点なのだ。
驚くのはワイマール時代の主流派ジャーナリズムが特定の政党や勢力と野合して派閥化し、オフレコの記者会見で勝手に盛り上がっていたという話。まるで安倍政権と大マスコミの関係そっくりで背筋が寒くなる。
(慶應義塾大学出版会 1800円+税)