地図上に可視化すれば世界の問題が一目瞭然
インターネットがあれば、世界中のあらゆる分野の統計資料やデータを瞬時に読むことができる時代だ。しかし、数字の羅列だけでそれが意味するところを理解するのはなかなか難しい。
そこで、伊藤智章著「地図化すると世界の動きが見えてくる」(ペレ出版 1700円+税)では、さまざまなデータをグラフに起こしたり、地域ごとに色分けするなどしながら、地図上に可視化して紹介している。
南北に長いイタリアでは、北部と南部で生活水準が大きく異なる。日本人にも馴染み深いミラノやベネチアなどは北部にあり、ローマ以南の南部はナポリを除いて旅行者も少なく情報も限られてくる。しかし、地図化すれば南北の格差は明らかだ。
1人あたりのGDPについて、3万5000ユーロ以上を赤、2万ユーロ以下を紫で示してみると、赤は北部にのみ存在し、最も高いのはトレンティーノ=アルト・アディジェ州。イタリアの平均2万6488ユーロの1・4倍に当たる3万7813ユーロとなっている。
一方、紫が集まるのが南部で、最も低いのが長靴のつま先の部分にあたるカラブリア州。1万6467ユーロで、イタリア平均の62%しかないことが分かる。
併せて、州別の失業率を見てみると、20%以上の赤を示すのがやはり南部に多く、カラブリア州が最も高い23・2%。7%以下を示す紫は北部に集中し、トレンティーノ=アルト・アディジェ州ではわずか5・7%という格差だ。
他にも、栽培面積で見る中国農業や、ヨーロッパにおける難民流入ルートと出身地、アメリカのモーターシティーの盛衰なども地図上に可視化して紹介する本書。世界の課題を視覚的に把握できる画期的なツールだ。