料理の起源は200万年前に遡る!?
世界各国のレストランがある日本。おいしい店をたくさん知っていて、食通を自負する人もいるだろう。
ところで、料理や食材はいつ地球上に生まれたのかを考えたことがあるだろうか。
その答えを教えてくれるのが、ジョナサン・シルバータウン著「美味しい進化」(熊井ひろ美訳 インターシフト 2400円+税)である。
ハーバード大学の生物人類学者であるリチャード・ランガムは、初めて料理をしたホモ属はホモ・エレクトゥスで、150万年前の出来事だと述べている。口が小さく顎の力が弱かったことなど、彼らの特徴は、加熱によって料理した軟らかい食べ物に合わせた適応だったというのだ。
さらに最新の研究では、料理の起源は200万年以上も遡る可能性があるといわれている。その根拠は、顎の骨の筋肉を強化するMYH16という遺伝子が、その頃のヒトの系統から消えているという遺伝学的証拠が存在していることだ。
料理をすることで力強い顎の筋肉が不要になった。つまり我々は、料理によって現在の姿に進化してきたと考えられるわけだ。
食材の進化もユニークだ。トウガラシに含まれるカプサイシンは、哺乳類にとって非常に辛いもの。しかし、鳥類はこの激辛成分を感じないという。トウガラシの種は哺乳類の体内に入るとバラバラに砕けて発芽できなくなる。一方で鳥類は、発芽できる状態で種子を排泄する。トウガラシはこの性質を見抜き、鳥類は感じないが哺乳類は追い払うカプサイシンを、防御機能として進化させてきたと考えられるという。
進化という切り口を通して食を見ると意外な事実を知ることができ、ますます食に興味が湧いてくるはずだ。