「どうしても生きてる」朝井リョウ著
「私」は不倫も暴力もなく離婚した。家賃や光熱費を半分ずつ負担して、平日は食事もそれぞれ外で済ませるような生活だったが、どちらかが欠けると成り立たなくなる何か、というものがなかったのだ。今は9歳年下の恭平という恋人がいるが、仕事をしていても、体の内側から湧き出てくるものがどんどん失われているという感覚がある。いつからか、私は携帯で事故や自殺で死んだ人のSNSのアカウントを特定するようになった。人が死ぬことに前触れなんて何もないという、健やかからかけ離れた論理を実感することで、安心感があった。(「健やかな論理」)
いつだって少しだけ死にたいと思っている女性の揺れる心を描いた作品など6編の短編。
(幻冬舎 1600円+税)