「心臓・血管の病気にならない本」山下武志著
日本人の死因でもっとも多いのはがんだが、2位の心臓疾患と3位の脳血管疾患を「心血管の疾患」としてまとめると、がん死に匹敵する多さだという。
しかし、血管が原因で起こる心臓や脳の疾患は、がんに比べると注目度も低く、正しく理解している人が少ないことに循環器内科医の著者は警鐘を鳴らしている。そこで本書では、心臓・血管の疾患の仕組みと、その予防法について詳しく解説している。
心臓・血管の疾患のリスクを高める原因のひとつが、血管にダメージを与える慢性炎症だ。例えば、高コレステロールの状態や糖尿病によって血糖値が高い状態は、血管に慢性的な炎症を及ぼす。そしてこの状態が長く続くと、血管が分厚く、硬くなり、やがて心臓や脳血管の疾患につながる。肥満自体も血管にとっては慢性炎症の原因である。喫煙は肺の慢性炎症につながり肺がんなどのリスクを高めるが、高血糖や高コレステロール、肥満状態は血管にとってのたばこのようなものだと本書。
つまり、心臓・血管を予防したいなら、喫煙者が禁煙をするように、高血糖や高コレステロールを改善して血管への負担を減らせばよい。実はがんよりも予防しやすいと著者は言う。そのためにできることは食事や運動など多岐にわたるが、生活習慣を変えるのは容易ではないため、百点満点を目指さず、ほどほどの努力を長く続けるのがいい。まず身に付けるべきなのが運動習慣だが、激しい筋トレなどをする必要はなく、早歩きを鼻歌が歌えるくらいの強度で週2回ぐらいから、1日30分程度行ってみよう。
血管にいい歯磨きや睡眠の方法なども紹介。少しの努力で健康な血管は作れるのだ。
(KKベストセラーズ 1500円+税)