「飲んでる薬、多すぎませんか?」秋下雅弘著

公開日: 更新日:

 厚生労働省の調べによると、65~74歳の13・6%、75歳以上の24・8%が7種類以上の薬を服用していることが明らかになっている。しかし、東京大学の老年病科が服薬数と薬物有害事象の発生頻度統計を取ったところ、薬が6種類を超えると副作用がおよそ15%も跳ね上がることが分かったのだという。

 多剤服用による副作用は高齢になるほど起こりやすく、また重症化する恐れもある。服用した薬は肝臓で分解されたり腎臓から排泄されたりして徐々に効き目を失っていくが、高齢者の場合、肝臓や腎臓の機能が低下していることが多い。そのため代謝や排泄までの時間が長くかかり、薬が効き過ぎてしまうのだ。高齢者に起こりやすい副作用としては、ふらつきや転倒、利尿障害の他、もの忘れやせん妄、うつなども挙げられるという。

 とはいえ、病気がある以上きっぱりと薬をやめるわけにもいかない。そこで著者は、主治医と共に薬に優先順位をつけ、数を絞り込む検討をすることを提案している。血圧の薬を複数飲んでいる場合は1つ減らしたり、とくに副作用の強い薬をやめたり、1日2回の服用を1回にするなど、方法は考えられる。また本書では、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬など、高齢者に副作用をもたらしやすい「できるだけ避けた方がいい薬」も一覧で紹介している。

 多剤服用は、病気は薬で抑えても副作用により健康な生活が阻害されるという本末転倒な事態も招きかねない。日本老年医学会でも「薬は5種類までを目安にする」という方向で意見がまとまっているという。薬を飲み過ぎていると思ったら、ぜひ主治医に相談してみよう。

(アートデイズ 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇