「失われたいくつかの物の目録」ユーディット・シャランスキー著 細井直子訳

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「私」は国立図書館の地図部門に置かれた地球儀を見ていて、ツアナキ島に興味をもった。それは1842年から翌年にかけて起きた海洋地震で海に沈んだ島で、記録によると、島民は戦いというものを知らなかったという。私は天国のような場所を想像したが、この島の木の実は一切の知恵を含んでいなかった。ここは避難場所であって追放地ではなかったからだ。

 キャプテン・クックの船がこの島に近づいたとき、島民は、やりやこん棒を空中に突き上げたが、それが威嚇なのか歓迎なのか、クックらには判断できなかった。

 他に、誰にも気づいてもらえない年老いたグレタ・ガルボの呟きなど、さまざまな「喪失」を描く12の物語。

(河出書房新社 2900円+税)

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