「記憶喪失になったぼくが見た世界」坪倉優介著
大学1年生のときに、事故ですべての記憶や知識を失った著者が、草木染作家として独立するまでの12年間をつづったノンフィクション。
事故後、10日で覚醒したものの以前の記憶だけではなく、言葉や知覚の記憶などすべてを失い、生まれたての赤ん坊の状態になってしまった著者。手をひっぱられ、やわらかいものに座らされると、突然世界が動き出した。上を見ると細い3本の線がついてくる。見とれていると、風景が止まり、外に連れだされ大きな物の前に連れていかれる。どうしていいのか迷っていると「ここがゆうすけのおうちやで」と言われるが、なんのことか分からない。
退院初日から、こうして世界を一から獲得していく過程をみずみずしい言葉遣いでつづる。
(朝日新聞出版 560円+税)