「越境」東山彰良著
台湾に生まれ、5歳で日本に渡ってきた著者は、40年近く日本と台湾を行ったり来たりして暮らしている。そのためか、国家に対する帰属意識はあまりなく、家族が幸せに暮らせる所が自分が生きていく場所だと考えている。「流」で直木賞を受賞して以来、「越境文学」についてよく尋ねられるが、自分の作品を「越境文学」とは思っていない。だが、文芸誌でリービ英雄さんと対談して、自分がどこにも属さないという「喪失感」こそが「越境文学」の本質ではないかと思った。
自分は「台湾で生まれて日本で育った一個人」としか認識していない著者が、さまざまな「越境」についてつづったエッセー集。
(集英社 1600円+税)