「育てられない母親たち」石井光太著
さまざまなセーフティーネットが整備されつつあるが、育児困難や虐待が減る兆しがない。現実の虐待事例を紹介しながら、それぞれの事情と虐待が引き起こされる構造を読み解くリポート。
結婚後、夫と義父母に尽くす完璧な妻が、出産後は病弱な娘の看病にかかりっきりに。やがて、娘の度重なるケガや体調不良の原因が母親自身にあることが明らかになる。娘に洗剤を飲ませたり、転んだと見せかけケガをさせていたのだ。母親は、子供時代の家庭環境によって自分を見てほしいという気持ちが高じた「代理ミュンヒハウゼン症候群」という精神疾患だった。
その他、夫に溺愛される娘に嫉妬して虐待してしまう母親など、それぞれの虐待に至った背景を探り、社会が抱える病理を明らかにする。
(祥伝社 960円+税)