「関西弁で読む遠野物語」柳田国男著 畑中章宏訳
菊池弥之助は若い頃、馬に人や荷物を乗せて運ぶ仕事をしていた。笛の名人で、笛を吹きながら夜通し馬を追っていった。あるうっすらした月夜の晩に、仲間と一緒に、笛を吹きながら深い谷を通った。白樺の林が茂り、その下は葦(あし)が生えている。すると谷底から何者かわからないものが高い声で、「おもろいぞー」と呼んだ。この話は「一行は、みな色失って、走って逃げたんやて」と結ばれている。(「笛の名人が聞いた声」)
「遠野物語」は岩手の昔話をまとめたもので、神隠しのようなちょっと怖い話が多いが、関西弁で書かれているので、「日本昔ばなし」のような、ほっこりした気分になる。民俗学者の解説付き。
(エクスナレッジ 1600円+税)