「森の文学館 緑の記憶の物語」和田博文編

公開日: 更新日:

 さまざまな表情を見せる森をテーマにした作品を集めたアンソロジー。

 猟師の案内で久しぶりに熊野の森に分け入った「私」は、もの狂おしいほどの瘴気を浴びて、たじろぐ。耳をすませば、楢(ナラ)や樫(カシ)の木の樹液が流れる音が鼓膜をなでる。楢の樹液はさらさら、樫のそれはとろとろと。木漏れ日には金の小紋、風には銀のうろこをならべる湧き水の水面に、書き込みだらけの古紙に似た私の顔が浮かぶ。その刹那、私は言葉の不実に思い至る。シダの海を立ち泳ぎするようにあえぎあえぎ歩いていると、猟師が登山中に行方不明になり、一昼夜後に裸足で見つかった若者の話を始める。(辺見庸著「森と言葉」)

 ほか、村田沙耶香や倉本聰、寺山修司ら多彩な執筆陣による小説やエッセーなど37作品を収録。

(筑摩書房 840円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  3. 3

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  4. 4

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  5. 5

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  1. 6

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  2. 7

    レベル、人気の低下著しい国内男子ツアーの情けなさ…注目の前澤杯で女子プロの引き立て役に

  3. 8

    芳根京子《昭和新婚ラブコメ》はトップクラスの高評価!「話題性」「考察」なしの“スローなドラマ”が人気の背景

  4. 9

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 10

    大阪万博会場は緊急避難時にパニック必至! 致命的デザイン欠陥で露呈した危機管理の脆弱さ