「ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論」小林よしのり著/扶桑社/1200円+税
「週刊SPA!」で毎週のようにコロナ騒動に対して舌鋒鋭く「アホか」とゴーマンかまし続ける小林よしのり氏。本書は同連載と書きおろしに加え、これまで同氏がブログで述べてきたことを紹介し、テレビに登場するコメンテーターや識者の論を検証する。
2011年の東日本大震災の際の福島第1原発の事故では、専門家が連日テレビに登場し、「原子炉は溶けない」などと初期の頃言っていた。その後完全にメルトスルーしていたことが明らかになったが、この時ほど「専門家とやらを一概に信用してはいかん」と思ったことはない。
そしてコロナである。今回も数々の専門家が登場したが、2~4月ぐらいは彼らが発する警告に怯えていたが、5月になると「これ、大したウイルスじゃないんじゃねーの? 少なくとも日本では」と思うようになった。再び専門家がうさんくさすぎる存在であることが白日の下に晒されたのだ。専門家というものは、とにかく最悪の事態を言っておけば「おまえの見込みが甘かったからこんな事態になったんだ!」と言われないで済む。原発で楽観論を述べた専門家が後に猛烈に叩かれたため、今回コロナの専門家は最悪の悲観論を言っておけばいいと考えたのだろう。
小林氏は、世間の「コロナはヤバ過ぎるウイルス」「自粛を!」「マスクをつけましょう!」という風潮に早くから疑義を呈していた。本書はインフルエンザの罹患者数と死者数をコロナと比較することから始まる。10月28日段階でのコロナの死者数は1723人だが、インフルでは「間接死」も含めて年間約1万人死んでいる。
数々のデータを読み解き、専門家が述べる「今のニューヨークは2週間後の東京」「このままだと42万人死ぬ」といった発言に「おどれら正気か?」と論文やデータを基にツッコミを入れる。
また、本書で問う重要なテーマが「死生観」だ。「ノーガード戦略」ともいわれたスウェーデンでは、死は誰にも訪れるものであり、チューブをつないで延命措置をすることは人間の尊厳にかかわることで、むしろ虐待なのだという。日本では徹底的に高齢者の命を守るために若者に自粛を強要し、ほとんどの人がマスクをつける異常状態に。人は年を取れば死ぬのである。
完全に「コロナは最悪ウイルス」「マスクはドレスコード」という空気が蔓延した今の日本。恐らく小林氏が正しいことが、いずれ分かるだろう。マスク至上主義者は一生マスクをつけるがいい。
★★★(選者・中川淳一郎)