「日没」桐野夏生著
エッチ小説家マッツ夢井こと松重カンナに、「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」から「召喚状」が来た。読者からの提訴に関する審議を行う審議会に出席しなかったので、出頭を要請する、というのだ。ほっといたら、携帯に電話がかかってきた。以前、療養所があった施設で講習を受けろという。
着いたのは有刺鉄線の塀に囲まれた病院のような建物。カンナは210号室に入れられ、B98と呼ばれることに。ここで自分の作品の問題点を認識し、訓練によって直されるまで帰れないと言い渡された。レイプや暴力、犯罪を肯定するのでなく、社会に適応した作品を書け、と。これは国家権力の嫌がらせだ。
「表現の自由」のない近未来社会の恐怖を描く。
(岩波書店 1800円+税)