「アウシュヴィッツで君を想う」エディ・デ・ウィンド著 塩﨑香織訳
27歳のユダヤ系オランダ人医師、ハンスは、看護婦のフリーデルと結婚し、理想に燃えていた。だが、1943年9月、2人はウェステルボルク通過収容所に移送され、さらにアウシュヴィッツに送られて男女別に分けられた。ハンスはフリーデルにキスをして「またね」と言ったが、それが最後だった。
ハンスは腕に番号の入れ墨をされた。自分はもうドクター・ファン・ダムではなく、抑留者〈150822〉なのだ。ベルギー人の抑留者に、女たちがどこに連れていかれるのか尋ねたら、「女性専用のブロックがあって、そこでいろんな実験をやっている」と答えた。実験? 何の?
強制収容所で離ればなれになった妻を思い続けた医師の手記。
(早川書房 2200円)