「うかれ十郎兵衛」吉森大祐著
寛政5年に出された奢侈禁止令のため、江戸の芝居町は客足が減り、官許を受けた3軒の芝居小屋のうち2軒がつぶれた。すぐさま仮興行のため許可を受けた都座の座主・都伝内は、芝居好きの金主、耕書堂を伴って、狂言作者・並木五瓶のもとへ。
五瓶の文机に何やら絵図のようなものが散らばっているのに気づいて、「それは何ですか?」と聞くと、衣装方、看板方、書割組に渡す指図絵だという。芝居の設定にしたがって、主役から端役のひとりひとりまで、動き出しそうなほどそっくりに描かれていた。
江戸の出版プロデューサー、蔦屋重三郎が送り出した東洲斎写楽や山東京伝ら、戯作者や絵師の人生を描く短編集。
(講談社 1650円)