「病院でちゃんとやってよ」小原周子著
リハビリテーションとは、病気やけがなどの治療を受けた後、社会復帰のために行う訓練のこと。歩行訓練などの身体的なもののほか、聞く、話す、物をのみ込むといった、言葉や聴力、嚥下(えんげ)に関わるものもある。こうした訓練を行う回復期リハビリテーション病棟の入院期間は、対象疾患ごとに定められていて最大入院期間は180日。あくまでも社会・在宅復帰が最終目的となる。
しかし、障害を負った肉親を迎える家族の感情はさまざまで、患者と家族の橋渡しをすることが看護師の大きな役目となる。
【あらすじ】大八木新菜は埼玉県南部にある大浦東病院の看護師。5年ほど前に整形病棟からリハビリ病棟に配属された。小学生のとき、父親が事業に失敗し、以後ずっと貧乏暮らし。両親のいさかいに耐えられず、高校卒業を機に故郷の仙台を出て看護師になった。安アパートで節約生活を送っているが、勤務帰りのエアロビが唯一の楽しみだ。
リハビリ病棟には実にさまざまな患者と家族がやってくる。杖で歩くのがやっとの母親に奇跡が起こって歩けると信じて疑わない娘。足の動かない父親を一生病院に居させてくれと懇願する母娘など――。
そこへ仙台から母親が新菜の部屋に転がり込んできた。父親に愛人がいたのを知って愛想を尽かしたのだという。
その母が脳梗塞で倒れ、治療後に新菜のリハビリ病棟にやってきた。リハビリが終われば自分が面倒を見なければいけない。でも仕事は続けたい。自らが患者の立場になった新菜は……。
【読みどころ】リハビリを終えた身内を受け入れようとしない家族のわがままを非難するのは簡単だが、そこには外からはうかがい知れない事情がある。そこへきちんと目を向けた、現役看護師による介護小説。 <石>
(双葉社 759円)