「城郭考古学の冒険」千田嘉博著
古代から近世まで、日本で築かれた城は約3万。その多くは城跡として身近な山や野にひっそりとたたずんでいる。本書は、世界遺産の姫路城など現代まで残った城郭をはじめ、忘れられた古城まで取り上げ、城から歴史を読み解くテキスト。
城というと江戸時代の城をイメージしがちだが、堀や土塁で守りを固めた弥生時代の環濠集落をはじめ、中世の集落の中心にあった館や、軍事的要地に築かれた砦、寺院が武装した城郭寺院とさまざま。
ほかにもアイヌのチャシや、沖縄のグスクなど、日本の城は実に多様性に富んでいる。信長は、城郭によって大名を頂点とする武士と商職人の階層的な編成(城下町構造)を実現した。天下人らが企図したそうした社会変革と城の関係を解き明かすなど、城郭考古学研究の成果と魅力を伝える。
(幻冬舎 940円+税)