「わが家をめざして」ジョン・デイ著 宇丹貴代実訳
「ぼく」はアーサー・ランサム作「ツバメ号とアマゾン号」シリーズの「ツバメ号の伝書バト」を読んで鳩に魅了された。鳩は渡り鳥ではないのに家に引き寄せられる力が強く、ウェリントン公が所有する鳩は、ナミビア沖のイカボー島から55日かけて8700キロ離れたロンドンまで戻ったという。
「ぼく」は恋人のナターリアとの間にできた2人目の子どもを流産で亡くした。このころ「ぼく」は家を求める衝動が強くなり、また鳩に関心をもつようになった。向かいの家をねぐらにしている鳩の群れが、家に住むとはどういうことかを教えてくれるのでは……。
家に帰るためにはるかな距離を飛ぶ鳩に、ホームのイメージを重ねた男の物語。
(白水社 3300円)