「酒場での十夜」T・S・アーサー著 森岡裕一訳
「酒場での十夜」T・S・アーサー著 森岡裕一訳
10年前、商用でシーダヴィルという村で一晩過ごすことになった「わたし」は、開業したばかりの「鎌と麦束亭」という宿屋に投宿する。主人のサイモンは善良そうな男で、16歳くらいの娘・フローラと息子のフランクも礼儀正しく、申し分ない人生を送っているように見える。しかし、わたしはサイモンが娘や息子を宿屋に併設した酒場に立たせ、客の相手をさせていることに危惧を抱く。サイモンの妻の作った料理を堪能した後、酒場に行くと、村の名士のハモンド判事の息子や滞在客らが酒を飲んでいた。やがて酒場で一悶着がおき、私はますますサイモン一家の行く末が心配になる。案の定、1年後に再訪すると一家に変化が起きていた。
19世紀の禁酒小説を代表する名作の初文庫化。
(KADOKAWA 1100円)