「ルート66を聴く」朝日順子著
60歳以上の人なら、かつて「ルート66」というアメリカのテレビドラマがあったことを覚えているだろう。トッド(マーティン・ミルナー)とバズ(ジョージ・マハリス)の2人の青年が、シボレー・コルベットを駆ってルート66を旅するロードムービーだ。主題歌の「ルート66」も耳に懐かしい。
ルート66とは、イリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結ぶ国道66号のこと。本書は、ルート66に沿って、その土地にゆかりのある曲が生まれた背景、音楽家の生い立ち、著者が実際に見たライブなどの話を交えて、ジャズ、カントリー、ロックンロールなどアメリカ音楽の神髄がつづられる。
起点はアリオッタ・ヘインズ・ジェレマイアの「レイク・ショア・ドライブ」。著者が20代の頃に住んでいたこのミシガン湖沿いの道の風景を案内しながら、当初まったく売れなかったがラジオから火がつき、今やご当地ソングとなった同曲を紹介する。続いてチャック・ベリーの「ルート66」、バディ・ガイの「スウィート・ホーム・シカゴ」。
さらに南下して、アメリカの「ベンチュラ・ハイウエー」、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」と続けば、音楽ファンなら思わず膝を打つに違いない。そして、テネシー州の田舎町から歌手を目指してギター片手にナッシュビルへ乗り込んだドリー・パートンの「ダウン・オン・ミュージック・ロウ」を間に挟み、旅はセントルイスへと入っていく。
ここで登場するのがチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」。さらにレーナード・スキナード、ボストンと、ロック色を強めていく。
さらに西へ向かえば、エルビス・プレスリー、ザ・バンド、エドガー・ウインター、ジョン・デンバーらが登場し、イーグルス、グレイトフル・デッドと西海岸色が濃くなり、最後、ボブ・シーガーの「アゲンスト・ザ・ウインド」で締めくくられる。
全長3800キロにも及ぶ長い道中を、25曲の歌と共に良き案内役に導かれて旅をしていくのはなんとも楽しい。 <狸>
(青土社 1980円)