「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」ブレイディみかこ著
英国在住の人気コラムニストによる時評集。
ひと昔前は子供に食事を与えない家庭は、親がドラッグやアルコールに溺れ、育児放棄をしているイメージだったが、現代社会のリアリティーは、親が懸命に働いているのに子供が満足に食べられないことだと指摘。全家庭の4分の1以上(ワースト地域は半数近く)が貧困状態である英国は、世界で7番目にリッチな国でもある。キャピタリズム(資本主義)を進めた国の成れの果てが一国の二極化。政治家がその現実を知りながら、小手先だけの取り組みしかしないのは、彼らが本気ではないからだと斬る。
他にも、コロナ禍でマスクの着用が義務化されたときの英国人たちの反応など。2014年から21年までの英国の現実を独自の視点で見つめる。
(岩波書店 1265円)