「ドッグテールズ」樋口明雄著
深夜、ミステリー作家の渉が鳴き声に気づいて自宅の庭に出ると子犬が迷い込んでいた。雨も降っていないのに子犬の体は濡れていた。部屋に入れ段ボールで急ごしらえの寝床を作ってやると、震えていた子犬は安心したように眠り始める。
アトリエから出てきたイラストレーターの妻の真由は、子犬を見て眉をひそめる。半年前の愛犬クロの事故死をきっかけに、夫婦の関係が悪化、今は家庭内別居の状態だった。クロを失ってから渉は激しいスランプに陥り、執筆も進まない。そんな中で突然現れた子犬は、クロの生まれ変わりに思えてならない。
ある日の散歩中、クロに導かれるままたどりついた小さな公園で渉は少女から声をかけられる。(「グッドバイ」)
人間と犬の絆を描く5編を収録した短編集。
(徳間書店 836円)