「コロナ論5」小林よしのり著/扶桑社
新型コロナ騒動が開始してからついに3年目に入った。訪れる場所すべてで「カンセンタイサクノテッテイヲー」のアナウンスがされ、人々は商業施設入り口での蠅のごとくアルコール消毒でお手々スリスリをし、マスク着用を求められる。
正直、私もここまでこの騒動が長引くとは2020年には思いもしなかった。著者の小林氏は、こう書く。この本は、基本的には週刊SPA!連載の「ゴーマニズム宣言」がベースとなっているが、適宜書き下ろし文章や対談が入っている。本作はコロナについての5作目となる。
〈『コロナ論』は商売のためではなく、「公」のために必要だから描いた。それも1冊で終わらせるつもりだったのに、コロナがいつまで経っても終わらないから、仕方なく何巻も描いているのであり、わしにエンターテインメントの才能があるから、結果として売れているだけのことなのだ〉
過去の4作を読んでも分かるのは、小林氏は、コロナ騒動における「弱者」を明確に理解している点である。それは若者と子供たちである。いわゆる「コロナ死」とされる人々の平均年齢を出すと、東京都の集計では82歳ということになっている。要するに、新型コロナウイルスというものは、2021年11月に発生したオミクロン株で明らかになったように「風邪の一種」なのだ。風邪が原因で肺炎等の病気を発症し、亡くなる高齢者もいる。
それを小林氏はこの2年間主張し続けていたのだが、「おまえはコロナを甘く見ている!」などの批判が同氏には殺到し、それでもめげずに「コロナ論5」にまで至ってしまった。
本当は小林氏は皇室関連の話題を週刊SPA!で描きたいのだと思う。だが、世間がコロナに沸いている中、仕方なくコロナについて描いているのだろう。本作でも、尻にマスクを着けることが大事である、といったギャグマンガ的要素をちりばめつつ、綿密なデータをベースとした論を紹介する。さらには作家・泉美木蘭氏の寄稿も入り、「そこまでコロナをヤバ過ぎる殺人ウイルスとする風潮、どうなんですか……?」という構成になっている。
「たかがギャグマンガ家の戯言だろwwwww」と言いたければ言え。ただ、私自身、小林氏のこの2年以上の言説を見ていると、恐らく同氏こそコロナ騒動の本質を最初から見極めている人物だと思う。それは、薬害エイズ問題にもかかわった点から感じることだ。
信じる信じないはさておき、一読を勧める。 ★★★(選者・中川淳一郎)