「東大名誉教授がおしえる! 建築でつかむ世界史図鑑」本村凌二監修
世界各地に残る遺跡や建物は先人たちの生きた証しであり、往時の暮らしを伝えてくれる。何よりもこれらは、視覚に直接飛び込んでくるので、歴史書などよりも印象が一層強く残る。
本書は、そうした世界各地の遺跡や建築、橋や墓などの建造物にスポットライトを当てて人類の足跡をたどるビジュアルテキスト。
約20万年前にアフリカ大陸で誕生した現生人類ホモ・サピエンスは、約1万年前には全大陸に拡散し、農耕や牧畜を営むようになった。
トルコのチャタルヒュユク遺跡は、その当時に存続していた世界最古の農村のひとつ。東西500メートル、南北300メートルほどの村にはレンガと泥で建てられた家が密集。最盛期には数千人が暮らしたという。
やがて地球規模で乾燥化が進行し、人々は水を求めて大きな川のほとりに集まるようになり、各文明が形成される。
紀元前3000年ごろ、チグリス・ユーフラテス川流域でメソポタミア文明を開花させたシュメール人は、南部にいくつもの都市国家を築いた。
それらの都市国家は高い城壁で囲まれ、その中心に神を祭る聖なる塔「ジッグラト」が建設された。旧約聖書に登場するバベルの塔は、前7世紀に新バビロニアが首都バビロンに築いたジッグラトをモデルにしたといわれているそうだ。
以後、ピラミッドやパルテノン神殿など誰もが知る遺跡から、現在はアムステルダム大学が校舎として利用している世界初の株式会社・東インド会社の事実上の本社屋や、第2次世界大戦中に連合国の代表が集まり、アメリカ・ドルを世界の基軸通貨と決めたアメリカの「マウント・ワシントン・ホテル」など現代の建物まで。352物件で歴史をおさらいする面白本。
(二見書房 1900円)