「深淵の色は佐川幸義伝」津本陽著
著者自身も門人として師事した大東流合気武術第36代宗家・佐川幸義氏の評伝。
著者が初めて師と出会ったのは昭和62(1987)年の7月3日、師の85歳の誕生日だった。佐川氏の師である武田惣角は、昭和18年に亡くなるまで、「今卜伝」と称され、不敗の歴史を誇った。 一方の佐川氏は60代、70代、そして80代と年を重ねるにつれ、その技は一層に磨かれ、まったく力を用いず、相手を思うがままに浮き上がらせ、投げ飛ばしていたという。男盛りの武道家が4、5人がかりでかかってもかなわず、惣角を超えたといわれていた。
95歳で亡くなる直前まで門人らを稽古指導したその生涯を、数学者の木村達雄氏ら高弟たちの日記や証言をもとに描き、佐川合気の奥義に迫る。
(実業之日本社 847円)