「黒石(ヘイシ) 新宿鮫Ⅻ」大沢在昌著
中国残留孤児2世、3世のメンバーを中心とした地下ネットワーク・金石(ジンシ)。ある日、新宿署生活安全課の鮫島は公安部の矢崎から、金石の8人からなる幹部組織・八石の一人、高川が保護を求めているとの相談を受ける。長年にわたり金石を追ってきた鮫島が高川に会うと、八石の“徐福”が、逆らう者には殺人者“黒石(ヘイシ)”を差し向けると宣言したことに怯えていた。
そんな中、千葉県袖ケ浦の側溝で頭を潰された遺体が発見される。被害者は徐福と対立していた八石の“左慈”だった。鮫島と矢崎は、埼玉で頭を殴打され死んだ男が、八石の“鉄”の舎弟であることに気づき情報収集をするが、その間にも八石のメンバーが一人ずつ殺されていく。やがて中国残留孤児たちの複雑な人間関係の中に、金石のアイドル的存在だった荒井真利華の名が浮上。真利華はなぜか徐福に心酔していた。
シリーズ累計800万部を誇る「新宿鮫」の最新作。「絆回廊」から続いた「金石」を巡る事件がついに決着する。鮫島たちが、断片的な情報をもとに徐々に黒石に迫っていく展開がスリリングだ。果たして徐福、黒石とは誰なのか。2人の関係とは一体──。緊迫感に満ちた展開に目が離せない。
(光文社 1980円)