「猫にならって」佐川光晴著
芳子は8歳のときに結核になり、治癒したが、自宅で伏せって過ごしていた。
小学校に入学した頃から家に居ついていた猫のミー子が4匹の子を産んだ。キジトラ2匹と、三毛と黒猫が1匹。ミー子が子猫に煮干しをかみ砕いて与えたりするのを見て、芳子の父の会社の顧問弁護士の岸川典光は「見あげた母猫ですね」と言った。
やがて子猫のもらい手が決まったが、キジトラの「チビ」はその前にいなくなった。「チビは、どこかで、たくましく生きていますよ」と言う岸川に、芳子は信頼感を抱いた。22歳で岸川と結婚し、妊娠した芳子は、ミー子を思い出した。
「私だって立派に産んでみせるから」
猫との暮らしを描く8編の連作短編小説。 (実業之日本社 1925円)