「誰に似たのか」中島要著
「誰に似たのか」中島要著
深川今川町の貧乏長屋、平助店(へいすけだな)に、日本橋通油町の筆墨問屋、白井屋の主人、太一郎がかごに乗ってやってきた。
この長屋に住むお秀は太一郎の妹だが、親の反対を押し切って売れない浮世絵師と一緒になったのだ。太一郎は、長年連れ添った亭主を亡くしたばかりの母が、永代橋の近くで屋台のそば屋をやっている年下の男に貢いでいるので、止めてほしいと、お秀に言う。母に聞いてみると、孫のお美代に誘われてそばを食べに行ったら、そば屋の杉次郎が、男ができた女房に逃げられたと聞いて同情したらしい。自分も女癖の悪い夫で苦労したからだ。
ところが杉次郎は、母に過分なこころづけや土産をもらうのがしんどいと言う。(「第一話」)
江戸の商家の家族が繰り広げる騒動を描く痛快な時代小説6編。
(朝日新聞出版 1760円)