「白鶴亮翅」多和田葉子著

公開日: 更新日:

「白鶴亮翅」多和田葉子著

 物語の舞台はドイツ。当初、夫の留学でドイツ・フライブルクに来た美砂は、その後日本に帰国してしまった夫と別れて、翻訳業を営みながらひとりで首都ベルリンに住んでいる。

 ある日、美砂は隣人のドイツ人男性Mさんに誘われ、太極拳教室に通い始めたのだが、Mさんは途中、同性パートナーと旅に出るため、美砂はひとりで教室に行くことに。美砂は太極拳講師の中国人女性・チェンさん、生徒として通ってきた中年のロシア人女性・アリョーナや、フィリピン出身の英語教師・ロザリンデらと次第に親しく話すようになり、そこから各国の事情や移民、国境について考え始めるのだが……。

 本書は、著者にとっては初めての新聞連載小説。ベルリンで出会った人々との会話を通じて、国家や民族、それぞれの国にとっての第2次世界大戦、国家や民族について考えを巡らせる主人公が描かれる。

 表題の「白鶴亮翅」とは、鶴が羽を広げるように右腕を上げる太極拳の技のこと。主人公が翻訳家という設定もあり、さまざまな世界文学についても触れられており、歴史・文学の両面から知的好奇心をくすぐられる。

(朝日新聞出版 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇