「音楽と生命」坂本龍一、福岡伸一著

公開日: 更新日:

「音楽と生命」坂本龍一、福岡伸一著

 今年3月に亡くなった音楽家の坂本龍一氏と、生物学者の福岡伸一氏の対談本。専門分野は違うものの、キャリアを重ねたからこそ見えてきた、ふたりに共通する問題意識について語り合う。

 話題の根底に流れるのは、人間が作り出す言語や論理である「ロゴス」と、人間という生き物を含めた自然そのものである「ピュシス」の対立についてだ。人は自然の中からある種のロゴスを切り取ろうとする傾向があり、そのほかのものはノイズとして無視する。

 これは地と図の関係ともいえるという。坂本氏は、図(ロゴス)をいかに美しいものにするかというような形で音楽が発展してきたことを説明しながら、自身が9.11を境に線的な音楽ではないものを求めるようになったと語っていく。

 一方の福岡氏も生物の細胞をすりつぶして分類し続けるロゴス的な研究に疑問を感じて、ロゴスだけではとらえられない生命そのものの探求のために動的平衡という考えに至ったことを提示。

 AI万能論や管理社会といったロゴスに偏る考え方の盲点を指摘しながら、全体像をとらえるための新たな思想のヒントを与えてくれる。

(集英社 2200円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 2

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  3. 3

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  4. 4

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  5. 5

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  1. 6

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  2. 7

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差

  3. 8

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  4. 9

    フジテレビを救うのは経歴ピカピカの社外取締役ではなく“営業の猛者”と呼ばれる女性プロパーか?

  5. 10

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された