「もっと悪い妻」桐野夏生著
「もっと悪い妻」桐野夏生著
大学時代の恋人、翔太郎が結婚したと聞いて、麻耶は張り合うように職場の同僚の新と結婚した。翔太郎に子どもが生まれたときも競うように子どもを産んだ。1年後に、仕事の打ち合わせで翔太郎と再会し、ほどなく元の仲に戻った。それから8年間、深い仲は続いている。
ある日、夫婦でAmazonで映画を見ていると、新が尋ねた。「麻耶は、誰かと会っているの?」。大事に思っている人がいて、それはやめられないと答えると、新は「困ったな」という。「バランスが悪いからだよ」と言われ、麻耶は言った「だったら新ちゃんも誰か探すといいよ」。麻耶の本心だった。(「表題作」)
6人の悪妻を描いた短編集。
(文藝春秋 1760円)