「ヒトラーの馬を奪還せよ」アルテュール・ブラント著 安原和見訳

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「ヒトラーの馬を奪還せよ」アルテュール・ブラント著 安原和見訳

 著者は自他共に認める有名な美術品探偵で、これまでも数々の美術品の盗難事件や贋作事件を解決したことで知られている。本書は、そんな著者が戦火で失われたはずの「ヒトラーの馬」の噂を聞き、発見するまでを克明につづったノンフィクション。「ヒトラーの馬」とは、総統官邸前に鎮座していた高さ3メートルを超える2頭のブロンズの馬だ。

 2014年、ブラントは美術品のブラックマーケットで密かに「ヒトラーの馬」が売り出されたことを知る。しかもカラー写真付きだ。売り手が誰であるか秘匿されたこの件を、ブラントは事務所の同僚2人と共に調べ始めたところ、この像の作者が4つのミニチュアを作り、ナチス高官に贈呈していたことが判明。ブラントらは、このミニチュアを基に贋作が作られたのではと推理し、実際、一対のミニチュアのありかも発見する。

 そんな中、ブラントはベルリンの図書館で、ある報告書の写真から売り出しの馬は本物であると確信する──。

 調査の過程で描かれる美術品の窃盗やそれを扱うブラックマーケット、表沙汰になることのないナチス絡みの団体の存在など興味は尽きない。馬を発見するまでのスリリングな攻防はまるでスパイ小説の趣で、一気読み必至だ。

(筑摩書房 2640円)

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