「旅路の果て」寺山修司著
「旅路の果て」寺山修司著
昭和52年の有馬記念。テンポイントと数々の名勝負を重ねてきたトウショウボーイは、このレースでの引退が決まっていた。「男の敵」と題された一文では、この2頭の名馬のこれまでと、最後の戦いを情感豊かに描く。
ほかにも、姿を消した酒場の女を捜しに出かけた山形県上山の競馬場で出会った老馬イワヌマホープが、かつて中央競馬で活躍していたスイジンだったなど、引退したサラブレッドたちのその後を描く表題作。そして毎週末、予想を店頭に掲げる焼き肉屋の主人の一獲千金大穴型の競馬哲学など、競馬に取りつかれた人々たちを描く「競馬無宿人人別帖」まで。
競走馬、競馬ファンを温かいまなざしで見つめた名文を収録。
没後40年を迎えた鬼才が残した伝説的競馬エッセーの初文庫化だ。
(河出書房新社 979円)