「『女の世界』 大正という時代」尾形明子著
「『女の世界』 大正という時代」尾形明子著
「女の世界」は1915年から6年間発行された女性誌である。ジャーナリストの野依秀一(のより・ひでいち)が作った、「青鞜」や「婦人公論」のような教養主義でも、「主婦之友」のような実用主義でもなく、自由奔放でアナーキーな雑誌だった。創刊号の巻頭には慶応義塾塾長・鎌田栄吉の論文「女の独立自尊」を掲げて、女性による「廃娼運動」を後押しした。幸田露伴は女性に参政権を与えよと主張した。
その一方で「好男子番附」といった勝手な採点も載せた。社会主義者の堺利彦らが編集に関わり、女性の権利から華族、実業家のスキャンダルまで取り上げる、何でもありの雑誌だったのだ。
ほかに、「ビアトリス」「女性改造」など、社会を騒がせた大正時代のユニークな女性雑誌を紹介する。
(藤原書店 3300円)