「ギケイキ3」町田康著
「ギケイキ3」町田康著
頼朝は、義経の恋人だった静の舞など見たくなかった。だが日照りのときに静が舞うと龍が現れ、雷雨が降ったという話を聞き、静に舞わせることを命じた。工藤祐経の妻は、頼朝に見せるためではなく、源氏の氏神である若宮八幡宮に参って神前舞を舞えばよいと、嫌がる静を説得した。
静は鼓や鉦の楽人がいないことを口実にゴネたが、頼朝の家来の上手が演奏することに。人を驚かす新ネタにしようかと思ったが、静は大胆にも「入りにし人の跡ぞ恋しき」と義経への思いを歌う。むかついた頼朝は静を殺そうとする。頼朝の家来が青ざめるのを見て、プロの舞い手である静は、次に「入りにし人の跡絶えにけり」と歌って頼朝をなだめ、その場を切り抜ける。
町田流の言葉で語られるエンターテインメント「義経記」。
(河出書房新社 2640円)