「ぐつぐつ、お鍋」安野モヨコ、岸本佐知子ほか著
「ぐつぐつ、お鍋」安野モヨコ、岸本佐知子ほか著
名文家らの「鍋」料理をテーマにしたエッセーを編んだアンソロジー。
底の浅い、小さな土鍋は「冬を迎えた私にとって、『何よりの友だち』」と始まる池波正太郎の一文は、魚介や野菜などをこの小鍋で煮ながら食べる「小鍋だて」について。毎夜のごとく続いても飽きることがないと、酒3・水7の割合の汁でアサリのむき身と白菜を煮てポン酢で、鶏肉と焼き豆腐と玉ねぎを固形スープひとつ落として煮るなど、お気に入りの具材と味付けを披露。さらに、終戦直後に手に入れた銅製の小鍋や、小鍋だてを覚えた少年時代の大衆食堂の思い出など、次々と話題が広がる。
そのほか、宇能鴻一郎が語るアンコウ鍋や、川上弘美のおでんなど。37人がそれぞれ思い入れのある鍋料理について記す。
(河出書房新社 880円)